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僕はもう一度深く溜め息を吐いて、向けていた足の向きを変えた。
その少女がいる、踊り場へと。
階段を踏みながら、口を開いた。
「邪魔だぞ、お前。探すんなら屋上で探しとけ」
その声に、少女は肩を震わせた。
爪先立ちの、飛び跳ねる瞬間で止まってしまった彼女は、危うくバランスを崩しかけ、慌てて体勢を立て直した。
そして、僕の方に振り返る。
「あー!何処にいたのよ!探してたのよ!?」
「見れば分かるって……」
ビシリ!と僕に指を突きつけて話す彼女に、僕は呆れながら答えた。
窓からの光が髪に当たり、照り返されて少し眩しい。
綺麗な髪だからなのだろうが、禿げたりしてもそうなのだろう。
後々の、自分の悩みの種とならない事を、切に願う。
「お詫びに何か買って!」
「参考書な」
「やだ!!」
今日もこいつは、無駄に元気だ。
その体力を、少しだけ分けてくれ。
この少女、暁 栞(あかつき しおり)は、僕の同級生だ。
変な名前、と初めて聞いた時は思ったが、人間慣れるものだ。
たった一ヶ月程度前に、僕のクラスへ転校してきたくせして、もう馴染んでいる。
転入早々、ド派手な事をやらかした所為だろうが。
そして、そのド派手な事の所為で、僕とこいつがよくつるむ様になったのも事実。
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