29人が本棚に入れています
本棚に追加
事実は小説よりも奇なり、というやつか。
この少女との巡り合わせは、僕にとっての大きな転機だった。
そう、個人的には、あまり好ましくないやつ。
「――…って、なあ栞。なんで僕を探してたんだ?」
「んん~?…んー……暇だったから…?」
「なぜ困った顔をする」
疑問符を数個程頭に浮かべる栞に対して、僕は小さく嘆息する。
今日で何回目だ、溜め息を吐くのは。
七、八回はしているぞ。
一日にそんな沢山してたまるか。
毎日のように、それくらいしているが。
当の元凶である栞は、手をぶらぶら振って頭を捻っていた。
そこまで考え込む程のことではないが、こいつの事だから予想は出来る。
些細な事にも無駄に本気で悩んで、分からなかったら簡単に匙を投げるやつだ。
面白いことには全力を注ぐようだが。
「んー……まぁ、いいや。帰ろ帰ろ?」
案の定、栞は考えるのを止めて催促してきた。
ニコニコと笑顔を向けて袖を引っ張ってくる。
無邪気にアピールしてきてはいるのだが、僕にはそれに乗ることが出来なかった。
単純な話、伊犂水辺さんを探さなくてはいけないからだ。
「いや、僕はする事があるんだが…」
その旨を伝えると、栞は首を傾げた。
アンタにそんな仕事があったっけ、とでも言いたげな目だ。
じゃんけんで係から抜けたんだ、何も悪くないぞ。
最初のコメントを投稿しよう!