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「――おはよ」
「…おはようございます」
未だ驚いた顔の彼女を通り過ぎ、自販機に近づきボタンを押す。
ガコン
屈んで落ちてきたそれを取り出し、彼女に半ば強引に握らせた。
「座って この電車の次でも間に合うから」
急にホットカフェオレを押し付けられ座るように命令された彼女は、
訳が分かない表情のまま俺に従った。
「飲んで」 という俺に、
「 いただきます」 と遠慮がちに返した彼女がプルタブを開けるのを待って、
自分も先に買っていた缶コーヒーに口をつけた。
「…また昨日のヤツが居たらと思って、 先に待ってた」
「…え 」
そう切り出した俺に彼女は驚いて、そのまま俺の顔をじっと見る。
その視線と自分の言葉に気恥ずかしくなって目を逸らそうとした時、
カフェオレの缶を花壇のレンガに置いた彼女はニッコリ微笑むと、
こちらに向き直り、両手を膝に置いて俺に深く頭を下げた。
「…本当は今朝も居たらって、少しだけ怖かったんです。
…ありがとうございます」
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