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「 …ヤメテ
俺が気になったから来ただけだから。頭あげてよ」
――そう、気になったから来ただけ
俺はやさしくもなければ
心がキレイな訳でもない
今だって勝手に待ち伏せて、
とられた距離がやるせなくて 縮めたくて
彼女の心に俺の存在を植えつけたくて来ただけ
俺がこんな事を思ってるなんて知らず、
真剣に礼を言う彼女に申し訳なく思った。
頭をあげてと言った言葉に、もう一度こちらを見て微笑むと
彼女は嬉しそうにホットカフェオレをすすった。
「――今日もありがとうございました、佐川さん先に行ってください。」
会社のある駅の改札を出ると、やっぱり彼女は俺を先に行かせたがった。
さっきまで隣に居た彼女が、また遠くに離れていく感覚に陥る。
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