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「山下、 それ11時までには終わらせて」
今日は昼から山下を連れ取引先に行かないといけないのに
午前中から仕事用のケータイに電話が鳴りっぱなしで中々思うように捗らない。
今日使う資料も山下はいまいちあやふやなので、
もう一度資料を上げさせて確認して、修正させて、また確認する。
――はぁ、殆ど時間がない
「できました」
午前中から多少ぐったりした山下が隣の俺に資料を渡す。
ざっと目を通し、取引先に説明しやすい内容か確認する。
「…おっけ。今のうちに飯食べてきて。
午後一でアル化学の中村さんと打ち合わせだから」
そう言ってパソコンに視線を戻すと山下は狼狽えだした。
カタカタと全身が震えている。
「え…… 中村さん、今日でしたか…
俺、中村さんとの事忘れてて、カスガリファインさんとのアポの変更、
今日の2時からにしてしまいました…」
え
一気に血の気が引いていく
「――オイ! まじで!?
どうしてそんな…
…イヤ、もうそんな事言ってる時間がない。
……山下! お前カスガリファインに先に行ってろ!
俺が来るまで時間を稼げ。ちゃんと資料に沿って説明してろ。
中村さんとの打ち合わせが終わったらすぐ行くから」
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