夢をみさせて

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「…昨日ありがとう  どうしても急ぎで取引先に行かなきゃいけなくて… ほんと助かった」 心から思った。  間に合わなければただ事では済まなかっただろう。 頭を下げた俺に彼女は慌てて、 「いえ、お役に立てたならよかったです」 と困ったように笑った。 「…っていうか、あれから柏原さんは大丈夫だった?  タクシー奪って…」 彼女だってタクシーを呼んでたくらいだから急いでいたはずだ。 「あ、あれからもう一台タクシー呼んだんですけど、  生憎全部出払ったらしくて、走っていきました」 「え」 会社から役所まで歩いて25分ほどの距離を、男ならまだしも、 女性をヒールで走らせてしまい、ひどく負い目を感じる。 「ほんと、ごめん けどおかげで何とか 大幅に遅れるのは免れれた。  …ほんと助かりました」 そう言ってもう一度お礼を言った俺に そうですか と彼女はほっと安堵したような表情を浮かべる。
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