○ートと神さま。

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寝返りを打とうとして違和感を感じる。 ベットが堅い、腕が動かない、というか体勢がおかしい気がする。 目を開くと見たことの無い場所、白い部屋、木の机、白い大きなベット、部屋自体は広くコンビニくらいならそのまま入りそうだった。 そして、肝心の自分自身は磔にされてた。 何故に十字架に縛られてる? うーん、可能性としては、駄目な息子に絶望した両親が俺を変な研究所に売った? いや、あの両親でそれはないと思う。 駄目な俺に悲しんで心配しながらちゃんと面倒見てくれてる。 だから、俺は自分の売られたって考えが正しければいいって、少し思ったんだ。 迷惑をかけて生き続けるよりは、諦められて、捨てられた方が楽だって。 悲しさで潰れそうになるけど、いつもは痛む腹の中身が今は痛まなかった。 改めて部屋の中を観察しようと思う、この白い部屋にはさっきから妙な違和感を感じる。 磔の状態で部屋を見回そうとした時、声がかけられた。 「やっと起きたか?」 後ろから顔が現れる、老人なのか、後ろで結われた白い長髪に白い伸ばされたひげ、深く刻まれたしわ。 着ているのは白いローブ、こんな格好してる人間を現実として見るのは初めてだった。 目にこもった力強い光や、ピンとした背中が老人としての老いを見せない。 まるで・・・まるでそう、人が想像した神さまみたいだって、俺は思ったんだ。
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