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「リボン、赤って事は一年か?」
ラインはデッキブラシをトイレの床に這わせながら出入り口の外に立つニーアへ問いかけた。
「はい、高等部一年です」
「ふぅん。俺は三年な」
よし、と一息吐いてラインはデッキブラシを用具入れに戻した。
「次は女子トイレ、か……」
「え、ぇぇえっ!?」
ラインの呟きにニーアが必要以上に反応する。
「え? え? えっと、女子トイレに入るんですか、先輩!?」
「入らないと掃除できねーだろ」
「だ、だだ、だ、ダメですっ! 女子トイレに男性が入るなんて……」
ニーアは顔を真っ赤にして手をぶんぶん回し抗議する。
「掃除しとかねーとまた長ったらしい説教が待ってるんだよ」
「でもでも! あ、そうだ! 女子トイレは私が掃除しますよ!」
はぁ? と、間の抜けた音がラインの口から漏れる。
「古家先生にはちゃんと先輩が掃除したって言いますし、先輩は女子トイレには入らないで下さい」
そう言うや、ニーアは女子トイレの方向へ姿を消した。男子トイレに取り残されるライン。
「……ま、いいか」
一人呟きラインは少し微笑むのだった。
まさか、この数奇な出会いが、後の学園生活を左右することになるとは夢にも思わずに。
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