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「何、泣いてんの」
「だ、だって……嬉しくてっ」
渡瀬君の口唇があたしの頬に触れる。
涙を絡め取りながら、あたしの耳元に辿り着いた熱が鼓膜を揺らす。
「来年も再来年も、ずっとずっと俺が祝うんだけど?そんなに泣いてどうすんの」
心臓が破裂しちゃうくらい、あたし今。
渡瀬君の事が愛おしい。
やがて耳元から滑り降りた彼の口唇が愛しい言葉を紡いで。
「……唯。好き、だよ」
そしてあたしの口唇に、甘い甘い熱を与えてくれた……
「…………にゃ~ん」
口唇を離した渡瀬君は今日も頬を紅く染めて。
いつもと同じように、今日も不機嫌。
「ユイ……忘れてた」
ずっと部屋に閉じ込められていた仔猫のユイちゃんが、すりすりと渡瀬君の脚に甘えてくる。
ねぇ、ユイちゃん。今だけは渡瀬君の事、あたしにちょうだい?
時間は止まる事なく動き続ける。
何も変わらない日常の“特別な日”
渡瀬君の隣にいるだけで、それは毎日毎日が特別で、日ごと日ごとあなたの事が好きになる。
触れるだけで溢れてくる好きの気持ち。
明日も来年も10年後も、ずっとずっと、渡瀬君だけに伝えるよ。
「渡瀬君、大好きっ」
見つめ合って絡め合って分かち合って想い合う。
あなたとのキス。
幸せに溢れた、こんなある日のお話。
「…………にゃ~ん」
END
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