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……16年間、平々凡々と生きてきた。
良く言えば品行方正。
悪く言えば、無駄に地味。
周りの友達は恋だ、合コンだ、カレシだ、なんて浮き足立つけれど。
地味子のあたしには無縁の代物。
だけど勿論……そんなあたしにだって好きな人くらい、いる。
楠原 唯(クスハラ ユイ)
高1の冬。
「……つーかさ。唯、あんた朝っぱらから何やってんの」
親友の千紗(チサ)が呆れ顔で口を開く。
そんな顔をしても、千紗は美人で自慢の友達。
「翔君からメールが……待っ……、今いいとこ……」
あたしの瞳も意識も、全神経がスマホの画面に釘付け。
窓の外は枯れ葉舞い散る低い空。
だけどあたしの心は上昇気流に乗って、ここが教室の中だなんて忘れてしまうくらいの高揚感。
「わ、嘘っ!ちょ、見て、千紗!」
スマホの画像を千紗に突き付けると、彼女は大きな溜め息を一つ。
画面の中には、照れたようにはにかんで笑う翔君の姿。
「どうしよう、翔(ショウ)君てば、絶対あたしの事好きだよねっ?」
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