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きぃ、きぃ、とブランコが小さく音を立てる。
幼い頃は自分をしっかりと受け止めてくれた頼もしい遊具も、成長してしまった今では少し心許ない。
窮屈な脚を伸ばしつつ、頭の片隅に揺らめく夢の欠片に思いを馳せ小さく呟いた。
「…私、あの時なに作ったんだっけ」
「んぁー?」
もうこんな場所で遊ぶような歳ではないというのに、文句のひとつも言わずに引きずられてきてくれたお人よしな友人の声に栞はうっすらと苦みのある笑みを浮かべる。
「夢をね、見たの」
優しそうに微笑む幼稚園の先生、歌に合わせて手を動かす幼い自分。
あの頃の自分は、一体なにを作ったんだろうか。
ぽつりそう落とせば、バカみたいに高く高く漕いでいた友人は後ざりりと音をたてて止まった。
ちょ、砂埃凄いんだけど。
「作ったってなにを?」
「ん、ほらあんたも昔やらなかった?」
ぐーちょきぱーで
ぐーちょきぱーで
なにつくろう?
なにつくろう?
みぎてがぐーで、ひだりてがちょきで
「かたつむりー、とかさ」
一連の動作をやってみせると、しまりのない顔で可愛いだなんて言ってくるから靴を脱いで吹っ飛ばす。
からり笑いながら避けられて、あぁここから降りたら次はけんけんぱじゃないかと友人に舌を打つ。
しかしそれも昔したことかと考えれば、小さな苛立ちは懐古的な気分に飲まれて消えた。
「やったやった!あれずっとやってると段々ネタなくなってくんだよな」
「あぁうん、ぐーとぐーで石ころとかぱーとぱーでおせんべいとか結構無理なのしてた」
「今思うとどう考えたっておかしいんだけどな、『よっしゃ俺頑張った!切り抜けた!』とか感じてたわ」
そうそうと相槌を打つ私に、それで一体なにを作ったのかとはとくるり最初に戻った疑問。
どうでもいいことなんだけどね、と私は前置いてから語りだした。
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