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どうやら、俺は竜一のことを心配してたようで、安心感が心を満たしていく。
なんて、面倒な言い方だけど、要はホッとした。
自然と顔が綻ぶのを感じる。
「うっし、そんじゃ食いに行こうぜ! さすがに腹減ってきた」
「……おう」
元気を身に纏って、自分らしさを取り戻して、竜一は立ち上がる。
それに続いて、立ち上がったところで、
「なぁ、竜一」
「うん?」
早速、広場に向かおうと歩き出した竜一に声を掛けると、竜一は少々不思議そうに振り返ってきた。
「もしかしたら、お前は入学した頃は性格を装ってたのかもしれない。けど、今もそうしてるとは俺には思えない」
「………………」
竜一の顔から笑みが消える。
これは俺のおせっかいかもしれない。だけど、こいつは自分じゃどうせ気付いてないから、俺が教えてやる。
「お前は自分は全然成長してないって言ったけど、学園に入学することで、心の底から笑えるようになったろ」
「……あ…………」
「それが俺たちのおかげなんては言わない。でも、例え入学が逃げだったとしても、その先で小さな成長でも出来たなら、それでいいんじゃねぇか?」
……何だか言ってて纏まりのなさを感じる。
まあ、いいや、要するに何が言いたいかっていうと、
「自分くらい自分のことを認めてやれよ。自分は絶対に味方なんだろうしな」
言ってから恥ずかしくなってきた。笑われてもおかしくない。
竜一はポカンと口を半開きにした後、小さく笑みを湛えると、
「……ありがとな。晴輝」
「へ」
「お前と知り合えて良かったよ」
どこか満足そうな顔で、こう返して来た。
こいつの方が恥ずかしいな。
とか思いつつも、余計気恥ずかしくなって来て、返事をすることなく、竜一の横を抜けて屋根から飛び降りる。
「あ、待てって。晴輝!」
……ったく、こういうところ、嫌だ。こいつの。
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