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下げた頭を上げるか上げないかしている内に、
「では、終業式は終わりです。各自、クラスに戻ってください」
更なる指示が与えられた。
で、これもバラバラに移動を始める。
ホント、適当だなぁ。
そんなわけで、すでに体育館の出入り口は鮨詰め状態だけど。
あれ、動いてんのか?
「少しばかり待った方が良さそうだな。あれでは無駄に体力を使うだけだ」
「……そうだな」
言ってることは正しいよ。まったく否定することがない。
けどさ、
「いきなり背後から話しかけないで、結構驚くから……」
トーンの落ちた声音で言いながら振り返ると、予想通り、我らが頭脳、青柳信がいた。
というのも、この人期末試験、学年約500人中3位。
「そうか。俺は不意打ちにも冷静に対処しろと教わったが」
ただし、言ってることがちょっとズレてることがある。
って、それどんな教育?
なぜか腕を組んで、瞼まで閉じて黙考を始めた信に、どう対処するか迷っていると、
「なんで突っ立ってんだよっ! ほら、早く行こうぜ!」
……信とは真逆のことを言いながら、俺の肩に腕を回してきた。
「いや、あの中突っ切るつもりか、お前は」
「おう!」
と、眩しい笑顔でグーサインを作ってきた。
視界の端で女子が揃って頬を赤らめたり、してるのは見なかったことにしよう。
「行こうぜ!」
「行かねぇよ」
即答しても、気を悪くした様子はない。
こういう男だ。この焔竜一という男だ。
もう慣れた。
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