††罪人と海。††

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「…どうぞ」 無愛想に呟くとカイが部屋に入ってきた。 「…何か用?」 思わぬ客にルミネはつい顔をしかめた。 「いや、用という用ではないが…久しぶりに人と接した感触はどうだ?」 「別に…でも」 「でも?」 カイは先を促すように微笑んでいる。 「…暖かかった」 「そうか、それは良かった。」 本当に嬉しそうにカイは微笑む。 「…さっきまで泣きそうな顔をしていたが…今は明るいな」 「!?」 ルミネは驚き片目を大きく見開いた。その様子にカイは 「ん?違っていたか?なら、すまない」 カイの発言にルミネはボソッと「鋭いんだかボケてるのかわからない…」 「それは褒め言葉か?」 「…(コイツ、頭大丈夫か?)」 「…」 「多分褒めてはいない」 「そうなのか?でも俺は褒め言葉として受けとっておく。ありがとう」 「…どういたしまして…?」 なんだか不思議な会話になってきたのを感じながらルミネは小さく嘆息した。 「まあとにかく今日はゆっくり休め。あとベッドじゃなくて床で寝るなよ?」 「!」 ルミネは再び驚き、カイは訳がわからないと首を傾げる。 「アンタ…エスパー?」 ルミネの問いに、ん?なんか言ったか?と微笑むカイ。「…何でもない」 「そうか?…それじゃあ、おやすみ」 「…おやすみ…」 消え入りそうなルミネの『おやすみ』を聞いてカイは満足そうに部屋を出て行った。 何、アイツ…本当によくわからない。笑ってばかりだし、ボケてると思いきや急に鋭い事言ったり的の外れたこと言ったり… ただ理解できたのは彼は自分の味方だと言うこと、同じ目的を持つ者同士。そして…なぜか彼の前では素直な自分になれる事。彼の能力なのか? 「…」 ルミネは考えるのをやめてベッドに入った。 久しぶりのベッドは柔らかくて少しくすぐったい。 彼女が眠りにつくまでそれほど時間はかからなかった。 彼女はまだ知らない。 自分の中で花開く感情を。
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