2人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日もサディア様のご加護あらんことを――…」
サディア様というのはこの大陸で崇められている創造神である。ウィズテアはこの星にある――星の名前なんてとうの昔に消え去った――4大大陸の中でも一番大きい。人々はこうして祈りを捧げて日々を過ごす。
少女は祈ってもどうにもならない事を知っていたが、いつもの習慣として行っていた。
さっき通った少し暗い街道を通って右に曲がるとこの教会に行き着く。ただし、教会といっても今はほとんど使われていなくて少女はここを根城にしていた。誰か居るわけでもない、たった一人。だが少女はそれを疎ましく思うことはなかった。元々人と関わるのは好きじゃない。少女にとってここは丁度いい【居場所】だった。
一息ついてもたれていた椅子から顔を上げた。そしてため息をつく。少女は何かを手にした。そのまま外に走っていく。
それだけみるといかにも『不思議ちゃん』だがわかるものにはわかる。そして少女の手にしていたもの、それは――古いロッドだった。
(…魔物…西に…いる)
まるで魔物を感知するかのように、少女は迷いなく走っていく。教会の敷地は広い。今ならまだ間に合う…!
「…見つけた…」
噴水のある小さい広場にそれはいた。少女は怯えることなく言葉を紡ぐ。
「風よ 刃となり彼の者を切り裂け wind…!」
少女の握るロッドから淡い光が発して少女の目の前に魔法陣が浮き上がる。そして青い光を纏った風が少女から放たれた。
それはまるで鎌のようにバラバラに飛んでいく。魔物めがけて放たれたそれは魔物を切り刻みスッと消え去った。
「ウガアアァ…!」
恐ろしく、身も震えるような断末魔の声を聞いてなお少女はその場を離れない。魔物が絶命するのを感情無く冷たい瞳で見つめていた。
魔物が絶命するまでそれほど時間はかからなかった。完全にピクリとも動かなくなった魔物をみて少女はその場を去ろうとした。だがそれはできなかった。見知らぬ少年が入口の前に立っていたから。
「……。」
誰、コイツ…少女は面倒臭そうに少年を無視して進もうとしたが無理だった。
少年が通せんぼするかのように立ちはだかっていたから。
少女は少年を一睨みすると言った。
「…通して。」
そういうと少年は微笑んでこう言った。
「俺の問いに答えてくれたらな。」
「どういう意味?」
「アンタ…さっき魔法使ってたよな?」
「!」
最初のコメントを投稿しよう!