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バレてた。少女は諦めたように長くため息をつき、少年に切り出した。
「何が望み?」
「へ?」
少女の問いに少年は何を言ってるんだといった風に首を傾げる。
「だから、何か望みはないの?」
「へ!?…望み?特に無いが」
「は!?私に話し掛けるなんて何か望みがあってそれを魔術で叶えてもらいたいんじゃないの?」
少女の苛立ちを含んだ声に気付かないように少年はサラッと言った。
「いや、特に。それは絶対言わなきゃいけないのか?もしそうなら…いや、う~ん…」
(は?なに、コイツ…)
少女は呆気に取られた。
「ならなんで私に話し掛けたの?」
「いや、なんというか…よくわからない」
「は!?」
少年の本当に訳のわからない説明に苛立ちながらも頭は少し整理されてきた。…ということはアレか。コイツは馬鹿…じゃなくて私の【魔術】目当てで来たわけではないのか。今までは話し掛けてくる者全てがこの私の『力』に目をつけ、魔術を扱える者が減った世界では魔術師は異端の存在になりいつの間にか魔法は願いを叶える便利な道具と化していた。魔術師だからと言う理由で迫害されたり、怪しげな研究者に追われたり、何より多かったのは『願いを叶えてくれ』と言うもの。もちろん存外に魔法といってもそんな人の願いを叶えることなんて出来ない。だけど少女には秘密があった。――…まあ、そんな紆余曲折を経ているのだから、そう思って閉じこもるのも無理はなかった。少女はそうして外界に触れるのを拒絶した。だからこそ、少年が言っていることの意味がわからない。
「あ!」
少年がパチンと指を鳴らすと少女はビクビクしながら振り返る。
――…コイツもあいつらと同じなんだろうか。…違ったら私は――
どうすればいい?
少女はいつの間にか座り込んでいた。少年は少女に向けて手をさしのべる。
「俺の願いは…」
その瞬間少女が怯える。だが少年は笑ってこういった。
「君の名前を教えてほしい。俺はカイ=ジルヴェルクだ。」
「私は…ルミネ=ミルナージ。貴方…変わってるわね。私なんかに話し掛けるなんて」
「そうか?君に話し掛けたのは君が他の子と違う…逆に言えば俺と同じだと思ったから。あと…俺の旅に付き合ってくれないか」
「旅?」
少女、ルミネが首を傾げるとカイはサングラスを外した。
カイの艶やかな銀髪が風になびいた。サングラスをとった先にあるカイの瞳は紅だった。
――紅。罪人の証。
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