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そう呟くとカイはまた笑った。
「そうだな。俺たちは存在自体が罪だ。たとえ自分たちに覚えが無いとしても。【フシ】だと言う時点で人の理を大きく外れている。それは消しようの無い事実だ。ならこうは思わないか?『罪人なら罪人らしく無様に運命にあらがってみよう』と」
「……」
ルミネは思った。
コイツは馬鹿だ。何故決められた定めに従わない。昔、遥か昔はルミネもそう思っていた。何故何もしていない私が罪人と呼ばれ蔑まれなくてはいけないのか。そして懸命に人の中で暮らし自分と人は大差無い事を証明しようとした。でもそれは無理だった。寿命の短い人間は通常の倍は生きるが全く老いる事の無いルミネを見て『化け物』と蔑み、人の群から追い出した。ルミネは神を恨んだ。何故私は人と暮らせないの、こんな躯なの?と。そして気付いた。無理なのだ。【フシ】である自分が人間と暮らせる訳がない。それからは人に見つからない様に人を避け暮らす様になった。死ねないかと躰にナイフを突き刺したことも、毒を飲んだことも、とにかく死ぬために何でもやった。だが結果は同じ。激しい痛みと苦痛はあったが死ぬ事はない。傷はあっという間に修復していく。死ぬ事も人間と暮らす事もできない。ルミネは絶望した。この躰を、神を、人間を、世界を、そして無力な自分を恨んだ。そのくらいしかルミネに出来る事はなかった。憎しみを持たないと自分がおかしくなりそうだった。
だがこの少年は?
違う、私とは違う。この状況を苦と思っていない。
眩しい。
私とは…違う。
恨む事しかできなかった自分は笑う事もとうの昔に忘れていた。
この少年は屈託なく笑う。その笑顔はルミネが求めたものだった。自分に対して同等に話して笑ってくれる。
ルミネの頬を一筋の雫が流れた。
「ぇ…」
いつの間にか泣いていた。とっくに感情を忘れた自分が。
それは止めようとしてもとめどなく溢れて止まらない。
「え!?俺なんか気に障る事を言ったか!?」
それまで笑っていた少年は焦ったようにルミネを見る。
「ちが…、これは…!…」
ルミネの体をあったかいものが包み込む。それはひどく優しい顔をしたカイだった。
「今まで辛かったな…今は俺の胸で泣いていいから」
…なんか馬鹿っぽくて気障な台詞…
でも…すごくあったかい…
ルミネは大声を上げて泣いた。涙は真珠のように美しく、そして哀しかった。
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