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「…本当は…私、人が好き…」
泣きながらルミネは話す。カイはうんとだけ言った。それでもルミネは嬉しかった。
「…だけど…みんな私が【フシ】だってわかると私の事怖がって…」
「…うん」
「だから、私もう傷つきたくなくて…死にたくて、でも死ねなくて」
「うん」
「私…笑う事なんてとうの昔に忘れたけど…もう一度笑いたい…」
「ルミネ、なら俺と一緒に旅に出よう。」
今までうんしか言わなかったカイが優しく話しかける。
「旅…」
ルミネは涙を拭い、言った。
「それもいいかもしれない…どうせここに居られるのも時間の問題だし」
「なら旅に…」
いいけど、と言ってカイから離れ落ちた眼帯を拾い、つけながらルミネは言う。
「条件があるの」
条件?と首を傾げるカイを無視してルミネは続ける。
「1、魔法はあまり使いたくない。その代わり私は銃が使えるから。2、不用意に罪人とか【フシ】とかバラさないこと。3、昔離れ離れになった仲間がいるの。その子を探すのと他の罪人探しを手伝って」
「…あとこれは私の願いなんだけど」
「願い?」
「クサイ台詞を言うのはやめて。鳥肌が立つ。」
クサイ台詞…鳥肌…とルミネの隠す事ない本音がグサグサとカイの心に突き刺さる。
「あと…なるべくならカイの側にいたい。貴方はなんでかわからないけど安心する」
恥ずかしがる様子もなくサラッと言いのけたルミネに対しカイは俺の側は安心する?そりゃ良かった…って、え?…浅いのか、深いのかよくわからん言葉だな…と真剣に悩んでいた。
その様子を見たルミネは心の中で(訂正…コイツ馬鹿じゃない、重度の天然ボケだ…)と一人呟いた。
その顔は無愛想だったが僅かに唇が上がって見えた。だがそれも一瞬ですぐに元のポーカーフェイスに戻った。
二人を夕日が照らしていく。
彼らの紡ぐ物語はここから始まった。
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