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朝日が昇る。それを合図に鶏が鳴く。そして人々は長い夜から目覚め、いつものように動き出す。
そんな様子を一通り眺めてルミネは大きくため息をついた。
昨日出会った少年、カイ。
自分と同じ罪人で【フシ】。
その彼の旅に同行すると言ってルミネは街の大きな時計塔のてっぺんに座って街を眺めていた。
昨日はカイと同じ宿屋に泊まった。自分は別にあの廃教会で良かったのだが、ルミネがろくなものを食べずに衛生状態の悪い教会に寝泊まりしていると聞いてすぐに無理矢理宿に連れて行かれ、部屋をもう一部屋とってもらい、宿屋で食事もさせてくれた。久しぶりの食事は美味しかったし、宿の女将さんがルミネの汚れた格好を見て、娘のおさがりだと言う質素な淡い色のワンピースとカーディガンをくれ、風呂にも入れさせてもらった。久しぶりに触れた人の暖かみに涙が出そうになった。でもきっと私が罪人だと聞くと豹変するんだろうな、そんな事を考えると不思議と涙はひいていき、妙な罪悪感だけが残った。
質素だがふかふかのベッド、ゴワゴワじゃない綿のシーツ。
本当に何年、いや何十年ぶりだろう。
こんなに人らしくしたのは。
ルミネは今までどうせ死なないのだからという理由で――心のどこかではそうやって死ねると信じていたのかもしれない――食事も必要最低限(彼女の中で)しか取らず、ひどく人から離れた生活をしてきた。
食事と言っても森に入って野兎や野鳥の肉を捕って食べるだけで、他は茸やそのへんに生えてて食べられそうなものだけたべていた。
そんなものだから、このベッドで寝るのもひどく躊躇いがあった。
そうだ、床で寝よう。それなら教会で寝泊まりしていた時と同じだ。
よし、そうしようと思った時ふいに扉がノックされた。
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