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蜜柑は才女だった。しかし、この発言を聞いて、頭がよすぎるというのもどうなんだろうとリョウは思ってしまった。きっと、非現実的なことを考えてしまう年頃なんだろう。蜜柑のようになりたかったので、素直に聴く耳を持った。
「リース?」
「簡単に言うなら創造者かな。だけど、リースは神様ではないの。私たちの想像する神様は全知全能の絶対的であるけれど、リースは私たちの世界だけしか力を使えない、いわばゲームの製作者のような存在かな。リースが住んでいる世界では、きっと私たちの世界となんら変わりない生活をしていると思うの。だって、何でもできてしまうなら探究心はないだろうし、私たちの世界を創らなくても別にいいでしょ?」
「神様の暇つぶしや気紛れかも」
「どうかな? 電話中に落書きを神様がすると思う? 私にはイメージできないな」
「僕には神様が電話するのからイメージできない」
「単なる喩えよ。対応しなさい。リースの命を受けて、天使たちがこの世界を監視しているから、悪いことはやっちゃだめだよ」
「僕はしないよ。される側さ」
しゅんとして、小さく言った。慰められている自分が不甲斐なかった。
「それでいいのよ。正義のヒーローは弱い者の味方。だから弱い者も正義なのよ」
「……うん」
あれから五年経つが、高校生になった今でも約束を守り続けている。
悪事は働かない。空き缶を置き捨てることもしなければ、悪口も頑なに言わない。
それがリョウのジャスティス。
天使はそんなリョウを見ていてくれた。
**
高校でのリョウは酷い弄られキャラだった。いや、内容は時が経つにつれ悪質になり、弄りではなく虐めに近いかもしれない。リョウは人よりも劣っているところがあまりにも多すぎるので仕方ないと諦めている。身長は平均的だが、体重が大きく下回り、力も体力もない。いくら学弁に勤しんでもテストで点数がとれない。記憶力が壊滅的だった。
「じゃあな、ノロマ」
クラスメイトの陌間佳はそう言うと、肩や背中ではなく後頭部を叩いた。
陌間は日本人離れした端整な顔立ちだ。それでいて、スポーツ万能、成績優秀、仲間からの信頼も厚い。何人の女性と噂になったのか数えきれない。リョウとは対極的にいる存在だ。
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