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【尚司】
あれから。
自分に取り巻いてくる奴らも呆れたが、それ以上に自分の馬鹿さ加減に呆れる。
ボーッとしてて当てられたら答えられなかったり、提出物を出し忘れたり、わざと間違えたところ以外間違えたり……。
今までこんなこと一度もなかった。
幸いにも、原因はわかってる。
すべての授業が終わり、放課後。
先生に提出したノートが帰ってくる。
「あの……鷹見くん、ノート……」
誰だっけ。
学園祭が終わってから、椅子に座ってれば誰かがこうやって俺がやることを喜んでやってくれる輩が増えた。
本当にキング……王様みたいだ。
ふつふつと湧き上がる苛立ちを抑え、ノートを開く。
紙を滑らせていた手が、ピタリと止まる。
「峰の雪みぎはの氷踏み分けて 君にぞまどふ道はまどはず」
目にとまったのは、評価の印なんかよりも、綺麗な字で書かれたとても繊細な言葉。
飛び上がるように立ち上がった。
いきなりだったもんだから、目を丸くさせてこっちを見る周り。
近くにいた部員に部活は遅れてくると言って教室を出た。
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