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【シャルク】
創立祭の準備から終わりまで、自分としては何事もなく終わったように見えた。
ミスコンのクイーン枠で一位をとって生徒たちからおめでとうと言われ、むしろ嬉しいことばかりだ。
創立祭の写真注文のサンプルが廊下にずらりと並べられ、ここ毎日のように銀次の写真を買うか買わないか迷っていた。
来年も出るかもしれないがこのショットは今年しかないんだぞ!
でも、先生が生徒の写真を個人的に買うなんておかしくないか……。
こう悩んでいる間も楽しくて。
そう、浮かれていたのだ。
今日のところは保留で……。
歩き出して、すぐ曲がり角で勢いよく誰かが自分にぶつかる。
苦しそうな声が下からして、視線を下ろすと顔を蒼白とさせた司だ。
「司?廊下をそんなに走ったら…」
「シャルク先生!!!」
怪我するぞ。
そう言いかけたところを、張り詰めた大声で、名前を呼ぶ司。
「あ、あぁ」
いつもの彼から想像もできない表情を、今俺は見ているんだ。
「…っ」
……。
「杏子を、助けてください!」
一瞬詰まらせて出た言葉。
その一瞬でさえもどれだけの想いが詰まっているのかがわかった。
「邪魔にしかならないと思うけど…俺も連れてってくださいね!」
少し庇っているように見える腕に目が行く。
きっと転んだ時に腕を痛めたのだろう。
腕を痛めた……。
その先にある事を想像して思わず視線をそらした。
「なにを言ってるんだ、司。最後に杏子くんを抱きしめてやるのは君の役目だろ?
司がいてくれなきゃ困るぞ」
さて。
くんと匂いを嗅いで大体の場所がわかると嫌な予感しかしなくて思わず失笑……。
なんてずる賢いやつらだ……。
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