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【シャルク】
匂いに近づくとだんだんと声も聞こえてきた。
話している内容でだいたい何が起こっているか予想ができてしまう……。
頼む……間に合ってくれ!
焦りは自然と身体に出て、早足になる。
「つかさぁぁぁ!!」
叫ばれた声に先に駆け寄ったのはもちろん司くんだった。
どれだけの思いを抱えて走り回ったかを思うと眉のシワが寄せられるばかりだ……。
「司……、杏子。お前たちはここで待っていてくれるか?
何かあっちゃいけないからすぐもどる」
今にも開きそうな瞳孔をゆっくりと瞼を閉じ抑える。
「元気そうなお前らは俺と一緒に指導室へ来い」
「あの!……俺もですか?」
「………は?」
何を言ってるんだ。全部聞こえてたんだぞ?
内容からしてこの生徒がこいつらに頼んだんだろう。
「お前は自分が被害者だといいたいのか?」
ただ淡々と、冷静に話しているつもりなのに小さく縮こまってしまった。
「早く行くぞ」
ぞろぞろとついてくる足音がいちいち腹立たしかった。
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