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都会の路地裏を歩いていたら、ぼろぼろの擦り切れた洋服を着ているお婆さんがいた。お婆さんは、洋服を引きずるようにして歩いている。お婆さんは僕に近づいて来た。
「これ、あげるじょー」
お婆さんは僕の右の掌を開かせて何かを握らせた。
掌には小さい丸い物が置かれていた。
「これはなんでしょうか」
僕はお婆さんに不思議に思い聞いた。
「それは人間の頭の形をした野菜が土からはえてくる、種じゃ」
「えっ。それは本当なんですか」
「あたしは隠し事なんかしないよ」
お婆さんはそう言った後、バサッと洋服の前面を開けた。
年齢を感じさせる肉体ではあったが、僕のヘラクレスが多少反応した。
「くっ、この私の肉体を見てもほとんど変化がないとは」
お婆さんは悔しがり、血の気を失った顔でその場を後にした。
僕はまず、畑にありったけの種を均等に蒔いた。なんとすぐに人間の顔が畑から顔を出した。老若男女の顔野菜だった。色々な表情の様々な性別の顔野菜がキャベツのように畑に並んでいる様は、なにか猟奇殺人のようでもあり、僕はその日、ご飯を食べられなかった。
次の日、畑に行くと人間の顔の口の部分から何かがよだれと一
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