プロローグ

3/9
前へ
/9ページ
次へ
事切れた女を、しばらく無表情に見下ろしていた少女は、ふと、思い出したように、女の砕けた頭を優しく撫でた 少女の瞳からは、相変わらず大粒の涙がこぼれ落ちる。止まることを知らないそれは、少女の頬に涙の跡を残す まるで子供が寝付くのを待っている母親のように、優しく、優しく。少女は女を撫で続ける 女の頭からは、トプントプンと、とめどなく赤い液体が流れ出ていた 流れ出た液体が黒ずみ、固まり始めたところで、少女はようやくその手を止めた 許して。少女は再び呟いて、部屋の出口へと向かう。振り返った部屋は、どこまでも真っ白で 少女の網膜には、女の回りに飛び散る鮮血の残像が焼き付き、真っ白な部屋を黒く点滅させた 少女はドアへと向き直り、部屋を出る 向かう先は食卓。もうすぐ、朝食の時間だ .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加