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「おはようございます、シロ。朝から仕事とは、熱心ですね。温かいミルクはいかがですか」
部屋に入ると、白衣を着た青年が少女を出迎えた。左右色の違う瞳に少女が映る
シロと呼ばれた少女は、いただきます、と返して席についた
白衣を着た青年は張り付けたような笑みを浮かべ、少女の前へとカップを置く。そして、並々と注がれたミルクの中へ、砂糖を2つ落とした
ミルクは小さな波紋を描きながら揺れたが、すぐに止まる
「シロ。せめて手だけでも、拭いてはいかがですか?もう乾いているので臭いはさほど気になりませんが、血液というものは、時間が経てば経つほど、落ちにくくなりますよ」
白衣の青年は血塗れの少女を見下ろし、笑う。この笑い方を「胡散臭いことこの上ない」と評した男は、まだこの場にいない
少女は小さく首を振り、カップに口をつけた。少しだけ飲んで、すぐに口を離す。暖めたミルクは、予想以上に熱い
「…しばらくは、汚れていたい気分なので。」
お見苦しくてすみません、博士。と少女は困ったように微笑んだ
博士と呼ばれた白衣の青年は、もう慣れましたよ、と笑う。これ以上ないぐらい目を細め、口許を歪めた笑顔は、やはり胡散 臭いことこの上ないのであった。
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