一之巻.一ツ目

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吉美(きび)桃瀬(ももせ)は、物心ついたころから異界と共にあった。 他人が見えぬモノが見える。 他人が感じぬモノを感じる。 他人が聞こえぬ音を聞き、他人が嗅がぬ臭いを嗅ぐ。 神社に生まれついた所為なのか、生まれは関係ない個人の能力なのか、悩んでみても始まらない。 見えるからには居るのだろう。 見えない者も居るのだろう。 見えるモノを居ないと言っても仕方がないし、見えない者に居るのだと説き伏せても仕方がない。 異界のモノどもは、ただ其処に居るだけなのだ。 ならば、捨ておけば良い。 桃瀬は、幼いころから達観した子どもだった。
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