遺書。

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洋子は自室に篭りっきりになっているらしく、食事以外の時は部屋から出てこないようでした。 僕が部屋をノックすると、部屋の扉は簡単に開きました。中から出てきた洋子はげっそりとした風もなく、見た目は元気そうでした。 中に入ってと言われて僕は部屋に入りました。 洋子はベットの上に座ると僕をまっすぐに見つめてきた。 僕は洋子に聞いてみた。 ……本当は、まったく悲しくないんでしょ? 洋子は小さく頷きました。 そして、小さく呟き始めたのです。 彩香ちゃんが死んで悲しいと思うのが一般的な感情なんだろうと思う。 でも、私はまったく悲しくないの。あんなに仲がよかったのにね。 彩香ちゃんの事嫌いだったわけじゃないの。 でも、なんて言うのかな、ピンとこないの。  実感が沸いてないだけじゃない? 嘘をついてみました。 案の定、洋子は小さく首を振った。 本当はね、扉の鍵を閉める時、目が合ったの。 誰と? もちろん彩香ちゃんと。 僕は驚きませんでした。
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