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洋子の日記は次の一文から始まっていた。
妊娠していると医者から聞いた時、目の前が真っ暗になった。
私と、あの人は、子供は出来てはいけない関係だったのに
産まないという選択はできなかった。私が怖かったし、あの人も許してはくれなかっただろう。
結局、私は彩香を産んだ。そして、彩香は透さんに引き取られて養女になった。
こんな事を思い出すのは、今日が彩香の誕生日だからだろうか。
私と透さんは一緒に住む事はできなかったけれど、私はそれでも幸せだった。
彩香も透さんと一緒に暮らしていて幸せそうだった。私も母親だと名乗る事は出来なかったけれど、時折家に遊びに行って見ることが出来るだけで私はそれでよかった。
今日は、彩香の誕生日なので、透さんの家に行って来た。
家に着くと透さんの息子の泉君が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。お待ちしてましたよ」
泉君は礼儀正しく頭を下げると中へ通してくれた。泉君は本当によく出来た子だと思う。さすがは透さんの子供だ。
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