一寸先は闇

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 「結婚式の祝辞?お前、結婚するのか?」  「ああ、来月ね」    明石は私と同じように女と縁がない男だった。性格が良心的な人間とはかけ離れていて、座右の銘は「恋愛無用」と自分で考えた四字熟語だった。    そんな彼が結婚をすると聞いたとき、私は結婚詐欺がまず頭を過ぎった。しかし、明石は頭脳明晰な男であったため、詐欺になんて引っかかる訳はないだろう。だとしたら別に考えるとしたら逆に明石は犯罪をしているかもしれない。  「おい、お前。警察の厄介になることだけはするなよ?」  「何を勘違いしている?俺は犯罪なんてしていないぞ?今回の結婚はお見合いの上進展した事だ」  お見合いかと私は納得した。恋愛無用の教えを説いていた明石であるが、もう三十路である。両親が結婚を心配してお見合いを組んだかもしれない。いくら明石でさえ親には頭が上がらない。結婚しろといわれたら、しぶしぶ結婚するしかない。これも親孝行の一つなのだ。  「お前が結婚か。想像もしていなかったな」  「俺もだ。一生独身でいるかと思っていたが、親に結婚の事をそろそろ考えろと言われたら仕方ない」  明石は今まで自分が貫いてきた信念が崩れたことに残念そうであったが、親の心配事を無くしたことから安心したようでもあった。
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