一寸先は闇

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 私の本を手に取ると、ご丁寧に値札が張ってあった。定価よりも大分安い。  しかも一冊だけではない。ほかの三冊も横に並んでいた。「夜明けの街」、「父からの便り」、「古本屋のおかしな店長」。  状態が綺麗なところを見るとあまり読まれ込まれてはいないようだ。  私が本を睨んでいると、唐草書房の店主が話しかけてきた。  「あんた、鳥山さんだろう?」  「え?はい、そうですが」  「ちょっと中に来なさい」  そういわれて私は唐草書房の店内に入っていった。店内といってもテントのしたに本棚と机、椅子を並べ、葦簀を張り陽を避けている。店内は外と比べてひんやりとしていた。四隅には数台の扇風機が羽に回している。暑さでやられたか、小太りの男性が一台の扇風機の前に座り込み、風邪を受けていた。
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