一寸先は闇

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 両親は私が作家として活動していることに不満を抱えている。安定しない職業なので仕方ないのだろうが、その上売れてないともなれば尚更だ。私も私自身に不満を抱えている。      自ら選んだ道だから後悔はない。しかし不満は感じる。なぜ私の小説は評価されない。賛否両論すらない、これは作家としては悲しいものがある。誰からも評価されない小説を書いていることに、日々疑問を感じる。  私は自分が特別な人間だとは思っていないが、誰かの心は動かせると思っている。小説には不思議な力がある。人に喜怒哀楽の感情を与えてくれる。文字が集まり言葉となったそれは、人類最大の武器なのだと思っている。  私自身、小説と共に生きてきたと言っても過言ではない。子供の頃読んだ絵本も、高校生の時読んだよく解らないビジネス書も、成人の時に読んだ名作の小説も、全てが今の私を作り上げている。  しかし、私も小説はそのどれにも届かない。誰かの心を動かしたいと思いを込めて小説を書いても、読んだ感想の手紙すら貰わない。私は、誰の心も動かせないのだ。  
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