一寸先は闇

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 酒を飲んでいると、出版社から電話が入った。どうやら新作の小説を書いて欲しいとのことだった。  書斎に行き、山積みにされたまっさらな原稿用紙を手にとる。私は今でも手書きで小説を書いているため、締め切りなどいつもギリギリなる。仕事が入ったら早急に執りかからねばいけない。  どんな物語にするかと考えたがまったく思い浮かばない。ふと思いついても何処かでみた内容だと思い考えるのを止めてしまう。  駄目だ。いくら原稿用紙を睨んでもアイディアが出てこない。私は書斎から離れ、冷蔵庫から麦酒を取り出し飲み始めた。まだ昼時であったが今の私には関係なかった。  結局、一日中酒を飲み、小説を書き始めることが出来なかった。締め切りは三ヶ月後、私は焦りを感じながらも眠りに就いた。  一週間がたったが、まだ書き出しすら書けていない。頭では小説のことを考えているが、ただ虚空に手を伸ばすだけのようで、まったく成果が出てこない。スランプという奴かもしれない、もしかすると、ただ私には物語を書く才能がないだけかもしれない。  外は春になり、桜が咲き始めた。しかし、私の心は真冬のように静寂である。生物が冬眠するようにまた、私自身も冬眠している。
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