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「…なんだったのかな」
不思議に思いながら分厚い本を開いた。
ファンタジーものだと思って借りたら、恋愛もの。
大して興味はなかったけど、せっかく借りた好きな作家さんの本。
しかもその人は滅多に恋愛ものを書かないから。
読んでみよう、と読んだらスゴくよかった。
今、ちょうどいいところ。
主人公の女の子になりきって、ドキドキする。
「はぁ…私もこんな恋をしてみたい…」
何も持っていない左手を頬にあて、うっとりしていたら。
どん! と右肩に小さな音。
ぶつかった衝撃で本を落としてしまった。
「あっ」
思わず声をあげると過ぎようとした人は、振り向いて本を拾おうとした。
「ぶつかってごめんね。 ボク、今急いでて」
本についた砂をパンパンとはらい。
「許してくれると嬉しいな」
上目づかい気味に、ふ、と微笑んだ。
よく見てなかったから気づかなかったけど。
まつげ長くて、目は赤色で綺麗。
髪は透きとおるような白。
肌も男の子にしては白くて、まるで雪みたい。
ドキドキした。
名前も知らない男の子に目を奪われ。
本を受け取ることを忘れていた。
「ごめんね。 じゃあ」
本を私に返し、走りさっていく彼のことが気になって追いかけた。
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