Wonder;a mystery countryⅠ

3/12
前へ
/74ページ
次へ
辺りを見回しながら彼がいた方に進む。 木に隠れた? 疲れて倒れた? 雪みたいで、白いウサギらしい彼のこと、もっと知りたい。 どこへ行ったの? 不思議で不思議でしかたない。 抑えきれないワクワクとドキドキが私の足を動かす。 「――きゃあっ!?」 ぐん、と落ちた感覚。 沈むみたい。 下からイスやベッドやランプや…インテリアが飛んでくる。 正確には、イスなどのインテリアはあまり動いていない。 近くをふよふよしているだけで、私が落ちているからそう見える。 「どこまで続くのかな…」 ゆらゆらと揺られながら落ちる感覚に眠たさを覚えつつ、どこまでも続く穴に疑問を抱く。 ◇ ◇ ◇ とん、と足を確かについたと思うのは数分後。 あの男の子はついさっき扉を抜けてしまった。 私も慌てて扉の前に行くけど、扉が小さいのか私が大きいのか合わない。 「どうしたらいいの? 鍵は…?」 改めて周りを見てみるといくつか扉があったり、テーブルに何本もの鍵、小瓶に入った液体、花束に添えられるようなカード。 カードには“私を飲んで”と書いてあった。 男の子が出ていった扉以外はすべてフェイク。 鍵もどれか一本以外はおもちゃみたい。 「どれが本物かしら」 直感で可愛いと思った鍵を選びながら、気になっていた液体を飲んだ。 心臓が大きくどくんとなった気がした。 な、…何これ? 急に天井が、テーブルが遠くなった。 ――私の体が小さくなってしまった。 …ウソ。 男の子が通った扉にいいサイズ! ……ダメじゃないですか!! 鍵がテーブルの上なのに!! 鍵もないのに小さくなったって。 力の限りテーブルの脚を叩く。 「どうしよう…」 泣きそうになる。 「キミはどうしてここにいるんだい?」 「え? 誰?」 「ここだよ、ここ」 辺りをキョロキョロ見回すと、ドアノブが奇妙な動きをしていた。 「………」 「怖い?」 「…すっごぉぉぉい!! 何これ、どうなってるの?」 ドアノブを握ってひねると。 「イタタタタタ!」 「あら、ごめんなさい」 「ふぅ。 小さくて鍵が取れないなら、これを食べるといい」 ポン、とオルゴールみたいな可愛らしい箱が現れた。 「食べていいの?」 私の質問に、ドアノブはドアノブなりに頷いてみせた。 ぱくっ、と口に放り込むと甘い味が広がった。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加