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辺りを見回しながら彼がいた方に進む。
木に隠れた?
疲れて倒れた?
雪みたいで、白いウサギらしい彼のこと、もっと知りたい。
どこへ行ったの?
不思議で不思議でしかたない。
抑えきれないワクワクとドキドキが私の足を動かす。
「――きゃあっ!?」
ぐん、と落ちた感覚。
沈むみたい。
下からイスやベッドやランプや…インテリアが飛んでくる。
正確には、イスなどのインテリアはあまり動いていない。 近くをふよふよしているだけで、私が落ちているからそう見える。
「どこまで続くのかな…」
ゆらゆらと揺られながら落ちる感覚に眠たさを覚えつつ、どこまでも続く穴に疑問を抱く。
◇ ◇ ◇
とん、と足を確かについたと思うのは数分後。
あの男の子はついさっき扉を抜けてしまった。
私も慌てて扉の前に行くけど、扉が小さいのか私が大きいのか合わない。
「どうしたらいいの? 鍵は…?」
改めて周りを見てみるといくつか扉があったり、テーブルに何本もの鍵、小瓶に入った液体、花束に添えられるようなカード。
カードには“私を飲んで”と書いてあった。
男の子が出ていった扉以外はすべてフェイク。
鍵もどれか一本以外はおもちゃみたい。
「どれが本物かしら」
直感で可愛いと思った鍵を選びながら、気になっていた液体を飲んだ。
心臓が大きくどくんとなった気がした。
な、…何これ?
急に天井が、テーブルが遠くなった。
――私の体が小さくなってしまった。
…ウソ。
男の子が通った扉にいいサイズ!
……ダメじゃないですか!!
鍵がテーブルの上なのに!!
鍵もないのに小さくなったって。
力の限りテーブルの脚を叩く。
「どうしよう…」
泣きそうになる。
「キミはどうしてここにいるんだい?」
「え? 誰?」
「ここだよ、ここ」
辺りをキョロキョロ見回すと、ドアノブが奇妙な動きをしていた。
「………」
「怖い?」
「…すっごぉぉぉい!! 何これ、どうなってるの?」
ドアノブを握ってひねると。
「イタタタタタ!」
「あら、ごめんなさい」
「ふぅ。 小さくて鍵が取れないなら、これを食べるといい」
ポン、とオルゴールみたいな可愛らしい箱が現れた。
「食べていいの?」
私の質問に、ドアノブはドアノブなりに頷いてみせた。
ぱくっ、と口に放り込むと甘い味が広がった。
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