18人が本棚に入れています
本棚に追加
私の左手は、『あのこと』を思い出すと、震えるようになった。
落ち着けば治まるが、それまではなかなか止まらない。
このことを知っているのは、私ときょうくんだけ。
両親も知らない。
『あのこと』を知っているのも、私ときょうくんだけだ。
「はぁ…、はぁ…、はぁ…。」
トイレに駆け込んで、息を整えながら、落ち着きだす。
すると、左手の震えも治まった。
橋本くんと中原さん、びっくりしただろうな…。
そう思いながら、また教室へと向かった。
* * *
教室へ行くと、きょうくんたちが駆け寄って来た。
「しー!」
「神谷さん!」
「詩音ちゃん、大丈夫?」
「あぁ。心配かけてしまって、すまない。」
「ううん。あ、震え止まったみたいだね。よかったー!」
と、私の左手を触ろうとする中原に
「悪い。触らないでもらえるか?また震え出したら困る。」
と言うと、ごめんと言いながら、触るのをやめてくれた。
「そういえば、そろそろ始業式だね。体育館行こうか。」
「そうだね!行こう♪」
「しーも。ほら。」
「……あぁ。」
きょうくんたちの後を追いながら、体育館へと向かった。
みんな、何も聞かないんだな…。
普通なら、質問攻めするところを。
そんな些細なことに、心地よさを覚えた。
最初のコメントを投稿しよう!