新学期

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私の左手は、『あのこと』を思い出すと、震えるようになった。 落ち着けば治まるが、それまではなかなか止まらない。 このことを知っているのは、私ときょうくんだけ。 両親も知らない。 『あのこと』を知っているのも、私ときょうくんだけだ。 「はぁ…、はぁ…、はぁ…。」 トイレに駆け込んで、息を整えながら、落ち着きだす。 すると、左手の震えも治まった。 橋本くんと中原さん、びっくりしただろうな…。 そう思いながら、また教室へと向かった。 * * * 教室へ行くと、きょうくんたちが駆け寄って来た。 「しー!」 「神谷さん!」 「詩音ちゃん、大丈夫?」 「あぁ。心配かけてしまって、すまない。」 「ううん。あ、震え止まったみたいだね。よかったー!」 と、私の左手を触ろうとする中原に 「悪い。触らないでもらえるか?また震え出したら困る。」 と言うと、ごめんと言いながら、触るのをやめてくれた。 「そういえば、そろそろ始業式だね。体育館行こうか。」 「そうだね!行こう♪」 「しーも。ほら。」 「……あぁ。」 きょうくんたちの後を追いながら、体育館へと向かった。 みんな、何も聞かないんだな…。 普通なら、質問攻めするところを。 そんな些細なことに、心地よさを覚えた。
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