1.最後のキャッチボール

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練習をしろと注意してたはずの一法師は気付けば黒坂の隣に座り込み、漫画を読み始めていた。 「どうしたんだよ。さっき俺を注意しといて、結局お前もサボるのか?」 と黒坂が一法師をなじる。 「気が変わった。今日は監督がいないことだし、俺もサボりをエンジョイすることにしたぜ!」 一法師は悪びれる様子なく、げらげら笑いながら喋る。 そんな一法師の様子を見て、黒坂は急に練習中に無断で休んでいる自分を恥ずかしく感じ、ベンチから立ち上がる。 「おっ、どうしたんだ? まさか急に真面目君になって練習でもするつもりか?」 一法師は長い前髪をいじりながら漫画への視線を一旦外して黒坂を見る。 「……部室行ってくる」 ぽつりとこぼし、黒坂はグラウンド裏の野球部室に向かって小走りした。
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