二人

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カチャカチャと食器の音と流水音。 夕食が終わってすぐに洗う。 泡が消えてキュッと音のする食器は気持ちがいい。 そして、その時は突然訪れる。 貴方が背後からそっと私を抱きしめて片手で水道を止め、そして耳元に愛を囁く。 それは何の言葉でもなくて、ただ、ふうっと息を漏らすのだ。 でもそれだけで私の身体は震えてしまい、艶めかしい貴方の吐息が恋しくて首が仰け反る。 そんな私の仕草に、貴方は逃がさないぞと伝えるようにその大きな手で私の顎を抑え、そうして長い人差し指が私の唇を妖しくなぞる。 それが始まりの合図、簡単に私は貴方の腕に落ちる。 耳元に掛けられる吐息はいつの間にか私の耳を啄むようになり、時々現れる舌先で遊ばれる。 「…ぁ」 思わず漏れる一瞬の隙に貴方の指先が口を割り、忍び込む。
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