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side;倉見 冬弥(クラミ トウヤ)
ーーーーーーー高沢組
俺は、この大きな組織に世話になっている。
高校を卒業して、大学進学をするはずだった。
けど、思い通りの人生……ってわけにはいかなかったんだ。
共働きの両親の休日が合う日はほとんどなくて、やっと家族3人の休日が合った日曜日。
すごく久しぶりの家族旅行に行ったその日、あとはもう帰るだけだ、と笑いあった。
けど、その直後、山間のぐにゃりとした道路で、暴走したトラックが突っ込んできた。
耳をつんざく爆音と体に走る衝撃。
この事故で俺はーーーーーーー両親と、右腕を肩から失った。
病院で目を覚まし、両親が死んだことを聞いた俺の部屋に入ってきたのは、”高沢組”という裏組織の頭(カシラ)だった。
左目に大きな一筋の傷のある白髪のその人に、俺は正直ビビッていた。
「ボウズ……お前さん、恨んでいるか?両親を奪った人間を」
何の前ぶれもなく、涙があふれた。
「奪った、か。やっぱ……死んだんだ」
「……」
無言で俺の頭を引き寄せ、ポンポンと頭を撫でる和服の男。
涙も声も止められなくて、枯れるまで泣き喚いた。
なんで俺たちが事故に遭わなくちゃいけないんだ、とか、あの日あの場所にいなければ事故に遭わなかったのに、とか、勝手に叫ぶ俺の言葉を頷きながら聞いてくれていた男。
ひとしきり泣き終わると、疑問がわいてきた。
「おじさん、誰?」
「はっはっは!!今さらか?高沢 重乃鯉(タカサワ シゲノリ)、ただの老いぼれだよ。ボウズの親父さんとは親しかった、ただそれだけさ。落ち着いて、行くところに困っていたなら、オレのところに来ればいい」
そう言い、地図を置いていく高沢さん。
「準備良すぎない?」
「細かいことは気にするな、ーー冬弥」
「……もう名前で呼んでくれる人いないかと思ってた」
そうつぶやくと、わしゃわしゃと乱暴に頭を撫でられ「何度だって呼んでやるさ」と微笑まれた。
退院してから俺は高沢組の家族の一員になった。
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