こころ

2/4
前へ
/30ページ
次へ
「ずっと前に、心臓をなくしてしまったの」 帰りのバスの待合室で君はそう言った。とても寂しそうな顔だった。 「心をなくしてしまったようなものなのよ。心臓をなくしたというのはね」 さびしい?僕は尋ねた。 すると君はより一層寂しそうに眉を下げて、しかし唇は引いて、微笑んだ。 「寂しい?そうね、寂しいわ。変でしょう?心をなくしたのに」 ねぇ、見て。 君はブラウスのボタンを外した。僕は息を呑む。 二人っきりの待合室。 ふっ、と甘い香りが散る。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加