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「ずっと前に、心臓をなくしてしまったの」
帰りのバスの待合室で君はそう言った。とても寂しそうな顔だった。
「心をなくしてしまったようなものなのよ。心臓をなくしたというのはね」
さびしい?僕は尋ねた。
すると君はより一層寂しそうに眉を下げて、しかし唇は引いて、微笑んだ。
「寂しい?そうね、寂しいわ。変でしょう?心をなくしたのに」
ねぇ、見て。
君はブラウスのボタンを外した。僕は息を呑む。
二人っきりの待合室。
ふっ、と甘い香りが散る。
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