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薄い水色のブラジャー。
それに包まれた、小ぶりの乳房。
二つの乳房の真ん中辺りに、桜色の布が、カーテン状に縫い付けられていた。きめ細かな肌に走る、引きつれた縫い跡が痛々しい。
「穴があいているの。心臓を落としたその時からずうっとよ。塞いでもダメなの。次の日にはまたあいてるわ。いつもぽっかりと口をあけててね、風が吹くと音を立てるの。ひゅうひゅう、ってね。物悲しくって寂しい音よ。あんまり寂しいからカーテンを付けたの。でもやっぱりね、ダメなの。どうしようもなく寂しくなるの。どうしようもないの」
なんと言ったら良いのかわからず、僕は黙り込んだ。彼女もしばらく、黙っていた。待合室は気まずい沈黙に充たされる。
と、ふいに彼女が口を開いた。
「中…見てみる?」
「……うん」
頷いて僕はそろ、そろ、とカーテンに手を伸ばした。
ゆっくり、ゆっくり、慎重に近づいて、そしてついに、裾をつまんだ。
深呼吸して、静かに、めくった。
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