六時間半目 オワリノハジマリ

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ーーーーB棟三階、音楽室。 防音の部屋の中、熟練されたピアノの音が響き渡る。 鍵盤の上を滑るような滑らかな手つきが走っていくと、心地いい旋律が音を奏でた。 その世界に入り込むように目を閉じ、その音と調和する少年。 最後の鍵盤を叩き終えて音が闇に消えていくのを聞き届けた後、ようやく彼は目を開けて軽く息を吸い込んだ。 「さて、そろそろですか……」 彼はその席から立ち上がり自分の眼鏡を中指でかけ直すと、まるで別人の如く目付きを豹変させる。 ピアノを引いてリラックスしていた彼とは似ても似つかない。 そんな二面性を持つ男、高瀬一樹。 「弱肉強食、弱い者は強い者に食われる。まるでこの世の縮図のようですね、ここは」 彼はピアノの脇に置かれていた武器を手に取り、ニヤリと笑った。
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