序章 カンキン

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「おい大柴、お前なんで制服着てんだ?」 「わ、わかんないよ。寝た時は確かにパジャマだったはずなんだけど……。でもそれを言ったら桜庭クンだって……」 そう言われて俺は立ち止まった。 言われてみれば、毎日その制服に袖を通していたので違和感は感じていなかったが、俺は今確かに学校の制服を着用している。 寝た時はスウェットが俺のスタイルなので、着替えた記憶のないこの制服を着ているのはとても不自然な事だ。 「謎だらけ……だな」 ポケットに手を突っ込んでみれば、その指先が何か固いものにぶつかり、カツッと小さな音を立てた。 手のひらにフィットするそれが何なのかなど、考えるまでもなくすぐにわかる。 俺だけじゃなく、今や人々の生活に欠かせない存在となっている物。 携帯電話である。 それをポケットから引っ張り上げ、画面を起動させてみるが、メールや着信履歴には特に気になるものはない。
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