序章 カンキン

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異常だ。 どこまでも異常だ。 まだ何かとてつもなく悪い事が起きたわけではないが、何か悪い事が起きるような、そんな予感がした。 「そ、そこに……だだだ、誰かいるの!?」 次に聞こえてきたのは震える男のか細い声。 そして同時にその男が持っている明かりが俺たち二人を照らした。 「さ、桜庭君と……大柴さん……?」 そしてその男の声にもよく聞き覚えがある。 同じクラス、教室の隅でオタク仲間と共にアイドル話をして盛り上がっているあいつの声だ。 「笹部、お前か?」 「笹部クン……?」 「そ、そうだよ!僕だよ!」 笹部幸太郎(ささべこうたろう)。 黒縁メガネで小太り、会いに行けるアイドルに惚れ込んでいるアイドルオタク。
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