序章 カンキン

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階段を一階まで降りて真正面、そこは毎日の登下校で必ず通る正面玄関。 携帯のライトを使ってなかったので、そこはやはり暗闇に包まれているが、その闇の中で何かが蠢いているのが見えた。 「だ、誰かいるみたい……」 この状況に一番狼狽えている笹部は、持っている携帯のライトをその闇の中へと向ける。 暗闇を切り裂いたその明かりに気付いて、向こうにいた人物もすぐにこちらに視線を向けた。 「う!なんだよ!誰だ!?」 「だ、誰!?」 突然の光に目を細めながらこちらの様子を窺おうとする男子生徒が二人。少し離れて女子生徒が一人、こちらに睨み付けるような視線を向けている。 その顔には見覚えがあるが、ウチのクラスの生徒ではないのは確かだ。 別クラスの奴、特に仲の良い奴ではない限り、名前なんて当然の如く覚えてはいない。 「あれ……あんたらは……確か三組の……」
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