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まるでその黒に張り付いてしまってるかのように、『動かない』のだ。
普通ならば、いくら鍵がかかっていたとしても、バリケードなんかで封鎖されていたとしても、力一杯動かせば僅かに音くらいならば立つものだ。
しかしこの扉は僅かに軋む音すらも立てなかった。
「どうなってる……」
異常なのはわかっていたが、既にその異常さは常軌を逸しようとしていた。
「あー無駄無駄、そのドアは開かねーわ」
坊主頭の横にいた長身細身の男。
確かこいつはバスケ部で、女子からかなりモテる奴らしい。
覚える気はさらさら無かったが、そんな噂が流れていたせいで名前だけは覚えてしまっていた。
樋口蒼(ひぐちそう)。
二組の奴で、会話らしい会話は今まで一度もした事はない。
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