序章 カンキン

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ーーーー「ん……んん……」 それはとても不可解な感覚だった。 瞼が重い、寝起きならいつだってそう、それは毎日同じだ。 随分と遅咲きの桜を見てもわかる通り、もう春だというのに今年は冬の寒さが長いこと身を潜めている。 その寒さのせいか、俺は大体毎日布団から出るのを躊躇ってしまい、登校はいつも遅刻ギリギリ。たまにアウト。 今日もそんな普通の朝が来ると、疑わないはずがなかった。 だが、今日の寝起きはいつもとは明らかに違うものだと、寝起きの頭でも十分に理解する事が出来た。 「冷た……」 フカフカの布団の中で安眠についたはずの俺は、何故か冷たい床の上にいたのだ。 瞼を擦りながらも、昨日の事について思案してみる事にする。
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