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『お前は利己的で思いやりを持たない人間。人として欠落した人間だ』と。
俺は誰を守り誰を殺す?
悠路だったら迷わないはず。
「保健室に……保健室に連れてくぞ……」
ここまで考えてようやく俺はその言葉を紡いだ。
生存出来る出来ないなんて事は関係なく、ただ『人として』やるべき事をやる。
俺は生まれて初めて心が満たされるような感覚を覚えた。
人の為に動く、それもそれほど仲の良い訳ではない人の為に動くなんて俺らしくもない。
心の奥の方で冷静な俺が『彼女を見捨てろ、楽にさせてやれ』と囁いている。
俺が生き残る為にはそれが最善の選択なのだろう。
大怪我をしてまともに動けない水無瀬は足手まとい以外の何物でもない。
唯一の武器であった拳銃も今は俺の手の中にある。
もう水無瀬は用済みだ。
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