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どうやら彼はアタシが自分に襲い掛かる事を想定していなかったようだ。
驚いている僅かな時間の分、アタシの方が速い。
脳内でのイメージが現実味を帯びていくのがわかった。
確実に彼の息の根を止める事が出来ると、アタシの中の予測は確信へと変わる。
彼の表情には余裕などない。
本気で死を覚悟した、そんな顔。
となるはずだった。
だが彼は追い詰められているにも関わらず笑った。
まるでさっきまでの焦った顔がブラフだったかのように。
アタシに彼を襲わせる為の布石だったかのように。
「……っ!」
踏み出した右足が何かに引っ掛かり、アタシの体は宙を舞う。
そこには何もなかったはず。
いくら薄暗い廊下だからと言っても、障害物があったら見落す訳がない。
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