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でもアタシの足は確かに、『何か』に引っ掛かった。
全速で走っていたアタシは思わぬ事態に体勢を立て直す間もなく、そのまま床に叩きつけられた。
両手の凶器もその衝撃で床の上を転がる。
何が起きたのか理解できなかった。
ただ一つだけわかったのは、『アタシは高瀬一樹が仕掛けた罠にまんまと嵌まってしまった』という事。
「くぅっ……」
全身に伝わる鈍い痛み。
だが今は痛みなど気にする暇なんてない。
一樹を、高瀬一樹を殺さなきゃ。
うつ伏せ状態だった体を起き上がらせようとした瞬間に首に絡まる細いヒモ。
高瀬一樹そのヒモを引く同時に私の背中を踏みつけた事で、アタシの首は急激に締め付けられた。
「ひぐっ……」
床に押し付けられたまま首が締め付けられ、息が全く出来ない。
なんとか体を起き上がらせようと力いっぱいもがいてみるが、男の力で踏まれたその足を押しのけるまでは届かない。
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